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会社の仕事はつまらないという当たり前の事実の確認

私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)

私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)

将来の職業のことは、やはり切実だった。

私は森鴎外が大好きだが、彼は「仕事」を必ず「為事しごと」と書く。「仕える事」ではなく、「る事」と書くのである。私はこの発想を気に入っていた。人間は、一生の間に様々な「事をる」。寝て起きて、食事を摂って、本を読んだり、映画を見たり、デートをしたり「為る」。職業というのは、何であれ、その色々な「為る事」の一つに過ぎないが、ただ、一日二十四時間、死ぬまでの何十年だかで、最も長い時間を費やす事であるには違いない。だからこそ、自分の本性とマッチしたものでなければ、耐えられないはずだ。

「職業というのは……一日二十四時間、死ぬまでの何十年だかで、最も長い時間を費やす事であるには違いない。だからこそ、自分の本性とマッチしたものでなければ、耐えられないはずだ」というのは私も思ってきたことで、だからこそ「やりがいのある仕事」をしたいと思っていたのだけれど、結局医師にも研究者にもなれずに会社員になるしかなかった。とは言っても、平野啓一郎みたいな非会社員の小説家が言っていることは怪しいもので、世間に溢れている「会社の仕事=つまらない」的なイメージは本当にそうなのだろうか、面白みを見つける工夫が欠けているだけでは、という気持ちもあった。

結果としては、一か月会社員をやってみて、会社の仕事はつまらない、というありふれた常識を確認することになった。

私の会社は、主力の自社製品(企業向けのクラウドシステム)一本で利益を挙げている小規模なIT企業だ。研修では、Excelで書かれた設定資料を読んで、手動でシステムに値を打ち込んで動作テストをしている。非常に単調な作業でつまらない。小さな会社なので、自分がこのままキャリアを進めるとどういう仕事が出来るようになるかはサクッと見通せるのだけれど、この手打ちのテスト業務に加えて、顧客の意向を聞くことと、顧客の意向を反映する為にシステムのカスタマイズ設定をExcelで書くことと、その設定を日本語に起こした設定資料をExcelで書くことが出来るようになる。基本的にはこれだけだと思う。Excelに始まりExcelに終わるという感じだ。

開発に回れれば面白い仕事が出来るかなと思い、プログラミングの勉強をしているのだけれど、開発はガチな少数精鋭で固められているので、未経験文系の自分に入り込める余地は無いような気もする。

仕事がつまらないこと以外には特に不満はなく、働きやすい会社だと思うのだけれど、このつまらなさは何とかしないとなと思っている。今は他の選択肢が皆無なので、この場所で出来ることをしつつ、将来の転職も視野に入れて他の選択肢をまずは一つ作る必要があると感じている。