共働き世帯の現実と旧来の性規範との距離感 ―kinaco68さんの記事への返信―

id:kinaco68さんに、先日ツイキャスで話した「妻がキレるのが怖い」問題についての感想記事を書いていただいた。

この記事を読んで、私は自分の現在の生活と照らし合せて、主に日本社会の性規範の強さに関わる人生の「予定調和感」に何とも言えないやるせなさを感じてしまった。

記事を読む限り、「夫に対等な存在として扱われたいがために、無理をし」ていた状態のkinacoさんがあまり幸せな状態でなかったのは明らかで、専業主婦となってからは旦那さんとの関係性も改善し、良い状態になっているように見える。残業フル装備のSEの1.5倍の給料を比較的短時間の労働で稼ぐ旦那さんの労働条件はかなり良いことが窺えるので、キッチリ夫婦で役割分担してそれで万事解決という見方もできるけれど、何か引っかかる部分もある。

私と彼女の場合

私も4月から彼女と共働きの同棲生活をしているけれど、家事分担量は彼女が多めで、生活費負担量は私が多めとなっている。kinacoさんの記事では、「比較的早い時間に帰宅できる環さんが家事全般を請け負った」と書いていただいたけれど、これは私の伝え方が不十分だった部分で、実際の私の家事分担は彼女が休みの日以外の週5日の料理とゴミ出しとクリーニングの出し入れくらいで、その他の洗濯、掃除などは彼女に全部やって貰っている。私の場合は家事分担への意欲はあるものの、父は家事を一切せず、母は子供に家事を教えない環境で育ってしまったこと、学生時代の一人暮らしでは家事らしい家事を一切して来なかったことのハンディキャップが大きく、彼女がやった方が圧倒的に効率的に行えるということがある。

また、彼女が近いうちに転職するということも決まっている。彼女の職場は典型的なブラック企業で、労働条件は劣悪(サビ残、有休取れない、特別な休みは正月の1日だけ、昇給も実質的に皆無)だ。

私が休日休み、彼女が平日休みということで、婚約したのに二人で結婚式の準備をする時間がまったくない、更にはちょっとしたデートをする時間も一切ないということもあり、最近彼女が転職活動を始めることを決意した。

kinacoさん夫妻との共通点

このように、私たちとkinacoさん夫妻には、

  1. 女性側の家事分担量が多い
  2. 男性側の労働条件の方が良い

という共通点がある。

この記事で筒井淳也さんが書いているように、日本社会は1970年代から80年代に成立した「男性稼ぎ手+専業主婦」モデルから未だ脱し切れていない状態で、男性が稼げなくなった現代においても、男性のケア能力(家事能力+精神的ケア能力)が低い、或はそもそも男性は本質的にケア能力を持てないと思い込んでいるというような状況がある。また、日本の労働市場に存在している厳然たる性差別の問題も深刻だ。

規範との距離感を見極める必要がある

このように、共働きで固定的な性役割から解放された関係性を築くということには現状様々な困難があり、旧来の性規範に従った方が生活が楽になるという局面も多いのではないかと思う。しかし、性別によってライフスタイルが決まっていてそこに関して自由度が無いというのは何とも窮屈なことで、次世代に向けて改めてゆかなければならないことでもある。

kinacoさんも、専業主婦は社会的に孤立しやすいという問題に直面し、再就職すべく現在は職業訓練中のようだ。

様々な制約がある中で、規範との距離を何処におくのが自らにとって幸せな状態か、各自が見極める必要があるのだと思う。