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就活のディスコミュニケーション ―企業と学生の騙し合い―

雑記

中小に絞って就活をするようになってから気づいたことがある。

大企業と違って中小の場合はこちらも「選べる」という意識があるため、会社説明会ではその会社がアリかナシか判断する訳だけれど、そういう視点で会社を見ていると引っかかるポイントがある。

学生を騙そうとする会社が非常に多いのだ。

騙しました。オフィスは雑居感のものすごいビルだったし、できるだけ近くの寿司屋とかで面接して。オフィスには来させないで首を縦に振らす、みたいなのをどう頑張るかとか。

これは新卒採用ではない特殊な事例だけれど、説明会の会場のぱっと見の華やかさにこだわるような中小には碌な会社がない。

他にも、「成果給」という名目で、残業代をまともに払わない会社もやたらと多くて驚く。休日の勉強会が任意参加と言いつつ事実上の強制無賃金労働となっていたりするケースも良くある。

いずれにせよ、巧みな事実の言い換えによる「やりがい搾取」が彼らの「嘘」の典型で、そのような会社をスクリーニングするには、不自然に思った点に鋭い質問を浴びせればいい。

一瞬ぎょっとした表情を見せた後、ぺらぺらと「事実の言い換え」による回答でこちらの質問にまともに答えないような会社はその時点でナシだ。

と、こうやって「不誠実な企業」を切る判断をしていると、彼らは、大企業の就活をしていた時の自分なのではないか、ということに気づく。

エントリーシートでは嘘をつくことしか考えていなかった。人事の目をごまかすことばかりに関心があった。

採用担当者の目には学生の嘘は筒抜けなのではないだろうか。

人事のプロは学生のどこを見ているか (PHPビジネス新書)

人事のプロは学生のどこを見ているか (PHPビジネス新書)

本来の自分の特徴を抑えて、会社が求めていると思われる姿を演じたり、奇をてらって目立てば、どこかに就職できるのではないかと、学生は考えているようですが、それでは、会社側が求めている学生像には当てはまりません。

しかし、嘘をつかざるを得ない事情もある。

エントリーシートを支配する思想に適合できないのだ。

例えば、「今までに遭遇した最大の困難と、それをどう乗り越えたか教えてください」という設問。どう考えても乗り越えられるような困難は「最大の困難」ではないだろう。私は今までに3回ほどアイデンティティが崩壊するほどの困難に直面しているが、いずれも逃げ出す以外に解決策はなかった。「困難は乗り越えるもの」という価値観のもとでは、どうでもいい、本当は大して困難とも感じていなかったような些細なエピソードを紹介する以外に無い。そうすると、いかにも嘘くさくて、つまらないエントリーシートが完成する。

上記の『人事のプロは学生のどこを見ているか』という本では、大企業の採用担当者は、「学生の個性が見えない」ことに悩んでいると言うが、学生の個性を殺す採用プロセスを用意しておいて、学生の個性を見たいとは、どういうことだろうか。

アメリカ出身で日本でのビジネス歴が長いPatrick McKenzieさんが書いた「ビジネス・イン・ジャパン」という記事では、

日本のベンチャーの友人はみな、雇用市場において未だ正しく評価されていない人を見つけるのが上手い。それしか良い人材を雇う方法がないからだ。高学歴でキャリア志向の日本人はサラリーマンか公務員になるので、ベンチャーは他を探さざるをえない。

と書いた上で、ベンチャーの経営者は「女性」、「外国人」、「社会不適合者」に注目している、と述べる。

確かに彼らは「社会不適合者」に優しい(彼ら自信が社会不適合者であることも多い)。

大企業のエントリーシートには書けなかったアウトローな経歴を得意のストーリー仕立てで堂々と語った後に、
「環君の話は本当に面白いね」
と言われると、ぐらっと来てしまうものがある。

たとえそれがやりがい搾取だとしても、自らの価値観を認めてくれる場所で働きたいと感じてしまうのだ。