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「セックス同意書」Yes Means Yes or No Means No?

11月祭サークラクラッシュ同好会の会誌を買って来て、ひでシスさん(id:hidesys)の『セックス同意書』を読んだ。フェミニズムの「Yes Means Yes(性行為について、拒否の意思が示されたとき拒否だと考え、それ以外は同意とみなす(No Means No)のではなく、同意が示されたとき同意だと考え、それ以外は拒否とみなす、レイプ・セクハラ防止の為の考え方)」に着想を得た並行世界SFの漫画とその解説文で、その世界では、事前に「セックス同意書」に署名してからセックスが行われる。ひでシスさんは、

日本でも最近はたしかにポリティカル・コレクトネスを重んじる傾向は出てきています。しかし社会が『セックス同意書』的社会になるとは考えられません。もし今度性行為をすることがあれば「セックス同意書」を作って相手にサインを求めてください。気持ち悪がられるのではないでしょうか。

と書いていて、これはその通りだと思うのだけれど、アメリカでは既に「セックス同意書」は実在している。

コンドームをキットに入れることで、女性は自分の身を守ることを考えるでしょう。そして契約書を目の前にすれば、誰かとベッドインすることをしばし考え直すかもしれないと思ったのです。

スマホ用のアプリもあるらしい。

カリフォルニア州内在住大学生、法律改訂に伴い、性行為前に使うべき必須アプリ登場 « アメリカより

Yes Means Yesは何故必要か、No Means Noではいけないのか

私自身は、パートナーとの関係性の中でNo Means Noを採用している。

No Means Noを採用する上で重要なのは、「Noとは言えなかったけれど、本当はNoだった」という状況を避けることだ。その為には、パートナーが拒否の意思を示すことを躊躇してしまうような態度を徹底的に排除することが求められる。具体的には、パートナーの体調等の事情でセックスを拒否する意思が示されたときに、ネガティヴな反応を返さないで快く受け容れるというようなことが必要になってくる。

その為には、椎名さんが書いているように、特に男体持ちサイドに繊細な配慮が求められる。No Means Noは「意識の高い男性」を前提とした考え方なのだ。つまり、No Means Noでは、パートナーを思いやる関係性を想定していないセクハラ、レイプを十分に阻止することが出来ない。

そこで、カリフォルニア州では通称Yes Means Yes Lawと呼ばれる法律が2014年に施行された。

カリフォルニア州で大学生同士のセックスは、お互いに同意(Yes)しないと、レイプとして訴えられる可能性がある。 « アメリカより

カリフォルニア州における大学生同士の合法的なセックスは、両当事者が「Yes(セックスしても良い)」と言う発言や態度を明確に示した場合にのみ、あとで「性犯罪者として訴えらる可能性が無い」ことになります。

「Yes」は言葉で伝えたり文書で書く必要は無く、「自分から体を相手に近ずける」「手を相手の身体に廻す」「性器に手で触る」などの性行為容認を示す積極的な態度を示した場合も、「Yes」の意思があった、と解釈されます。

「男女平等」を体現するYes Means Yesの世界

Yes Means Yesと関連してアメリカの恋愛事情が分かり易く解説されている記事に、興味深い記述がある。

“Yes Means Yes” とアメリカの恋愛 (1)アメリカで10倍うまく立ち回る方法

よく、こういう質問をいただきます。(いえ、私は国際恋愛の達人でもなんでもないです)

「外国人の男性から、猛烈アタック(死語?)をされています。彼は本気でしょうか?」

日本人女性の多くは、おそらく体験したことはある、または聞いたことのあるシナリオでしょうし、その積極性に戸惑うことも多いはず。

私が、アメリカ社会での男女関係を見てきて思うことは、以下の通りです。

「この人と健康な男女関係を築きたい」と思っている人は、男女関わらず、お互いの意見と意思を尊重し、常に50/50であるという見方をする努力をしています。

そして、上でも述べたように、アメリカでは「セクハラ」の意識がとても強く、それが明らかになると、加害者の男性にとっては死活問題になります。会社で起こった場合は、企業も責任問題を問われることとなり、日本で想像する以上に大きな問題になりうるのです。

そういったリスクを承知している良識ある男性は、うかつに、軽率に、女性に手を出すことはありません。 女性に迷惑をかける言動だけでなく、周りに誤解されるような言動も意識的に避けますし、それが紳士的振る舞いだと私は思います。

「男性から、猛烈アタック(死語?)をされています。彼は本気でしょうか?」というのは、日本ではよく見られる恋愛相談だと思うのだけれど、Yes Means Yesの世界では、一方が積極的で、片方が消極的に値踏みをしているというような関係性は絶対に「本気」ではないのだ。

最初の質問に対する答えは、

「『彼は本気かどうか?』を知ることよりも、『彼とどうなりたいか?』を自分で結論付ける必要がある」

ということですね。

日本では男女の性的価値に極端な偏りがある

ただ、ひでシスさんが書いたように、Yes Means Yesの考え方は日本では受け容れられないだろう。何故なら、日本の旧態的価値観では、性的価値は女体にのみ認められ、男体に性的価値はないからだ。そのような価値観の下では、男性が積極的にアプローチし、女性は自らの性的価値を出し惜しみしつつ男性を選別する、という恋愛観が横行することになる。Yesを明言してしまってはそれ以上カードが切れなくなってしまうのだ。その意味で、Yes Means Yesは古典的な恋の駆け引きを否定する発想でもある。

つまり、男女の対等な関係を目指す上では、男性の性的価値と女性の主体的アプローチを社会的に認めてゆくことが必要になってくる。

ただ、正直なところ、男体よりも女体の性的価値の方が高いというのはそれはそういうものなんじゃないかという印象もないことはない。

私たち日本人としては、アメリカ人のジェンダー対等についての真面目過ぎる取り組みを参考にしつつ、パートナーとの個別的関係性を柔軟に構築してゆければ良いのだと思う。

追記

いくつか突っ込みをいただいてこの記事を読み返してみて、重大な誤解を生みかねない書き方をしていたことに気づいた。「私自身は、パートナーとの関係性の中でNo Means Noを採用している」と書いたけれど、「「Yes」は言葉で伝えたり文書で書く必要は無く、「自分から体を相手に近ずける」「手を相手の身体に廻す」「性器に手で触る」などの性行為容認を示す積極的な態度を示した場合も、「Yes」の意思があった、と解釈されます」という上記リンク先記事のYes Means Yes Lawの解釈に従えば、私はもちろんYes Means Yesを採用している。

Yes Means Yes Law(カリフォルニア州上院法案第967)の原文を見ても、

Bill Text - SB-967 Student safety: sexual assault.

“Affirmative consent” means affirmative, conscious, and voluntary agreement to engage in sexual activity. It is the responsibility of each person involved in the sexual activity to ensure that he or she has the affirmative consent of the other or others to engage in the sexual activity. Lack of protest or resistance does not mean consent, nor does silence mean consent. Affirmative consent must be ongoing throughout a sexual activity and can be revoked at any time. The existence of a dating relationship between the persons involved, or the fact of past sexual relations between them, should never by itself be assumed to be an indicator of consent.

「積極的同意」は、性行為に関わる際の、積極的で、意識があり、そして自発的な同意のことである。性行為に関わるために相手や複数の相手についての積極的同意を持っていることを保証することは、性行為に関係する両者の責任である。抗議や抵抗の欠如は同意を意味せず、沈黙もまた同意を意味しない。積極的同意は、性行為を通じて継続していなければならず、いつでも撤回することが可能である。関係する人々に交際関係があることや、彼らの間の過去の性的関係の事実は、それ自体で同意の指標となると想定されることがあってはならない。

「積極的同意」の具体的な示し方については明記されておらず、英語の記事をいくつか読んでみても口頭や書面での同意を必要とするかについて解釈が分かれているようだ。ただ、法案の文章は、性行為の同意に関わるフェミニズム的な啓蒙を主眼としているようにも読める。また、この法案の背景には、カリフォルニアの大学で、泥酔させた上でレイプする(スーパーフリー事件のような)事件が多発していたことがあることも踏まえなければならないだろう。Googleで検索すると色々な記事が見つかる中で、

So are affirmative consent laws a good idea? If they are broad enough to include nonverbal cues, I think so. If we can admit that enthusiastic consent is often communicated in body language or knowing looks, then we must also accept that the lack of consent doesn’t always manifest itself in a shouted “no” or “stop,” either. It shouldn’t be the sole responsibility of the uninterested party to speak up during a sexual encounter. If you think it’s easy for a person to just say no, then why would it be so hard for his or her partner to just ask?

では積極的同意を求める法律は良いアイディアだろうか?非言語的サインにまで解釈の幅を広げるならば、私は良いアイディアだと思う。情熱的な同意はしばしばボディ・ランゲージやそれと分かる表情によって示されることを認めるならば、同意の欠如が常に「ノー」や「やめて」と叫ぶことによって明示されるわけではないことも受け容れなければならない。性的交わりの際に声を出すことは消極的当事者に一方的に担わされる責任となるべきではない。もしあなたがある人にとってただノーと言うことが簡単だと思うなら、彼や彼女のパートナーにとってただ意志を聞くことが難しいと感じる理由があるだろうか?

このAmanda Hessさんの解釈に同意したい。法律の厳密な解釈に囚われるのではなく、こういう風に同意の確認方法についての思想をアップデートしてゆくことが重要なのではと感じた。

ただ、この記事では基本的に「言葉で意志を明示するかそうでないか」の意味でYes Means YesやNo Means Noを使っている。Yes Means Yes概念への理解度が不十分な段階で文章を書いてしまったことは反省しています。

「セックス同意書」Yes Means Yes or No Means No? - あなたとあなたの話がしたい

“男性の性的価値”⇐なんかじわじわと上がってきて認められている流れだと思うし、絶対に受け入れられないということはないと思うんだけどなあ。どうなんだろうか。無理みたいに言われちゃうと悲しい

2015/11/20 20:24

eri_picoさんのブコメ、最近は様々な方面で、男性の性的価値を認めるような動きあって素晴らしいと私も感じています。