理由なくモテるハーレム系主人公にストレスを感じてしまう

溺れる花火 1 (ビッグコミックス)

溺れる花火 1 (ビッグコミックス)

『ヒメゴト』が最高に面白かったので、峰浪りょうさんの前作『溺れる花火』も読んでみた。

『ヒメゴト』と同様に恋愛における幻想と真実の落差が鮮烈にかつ繊細に描かれた作品で、面白く読めたのだけれど、受身な主人公泳太が理由なくモテまくる(4人の女性と性的関係になる)のが気になってどうもフルコミットで作品世界に没入できない。

泳太の彼女小秋は病弱で入退院を繰り返していて、性的接触が十分にできないことに互いの不満が溜まってゆく。

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小秋は満を持して泳太に自らのセックスへの欲望を伝えるも、

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泳太は小秋の従姉妹夏澄とのセックスに夢中。「悪いのは俺だ。そしてあなただ。」いやお前だけだ。

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挙句の果てに自分が恋したのは「病弱な美少女」であって、主体的性欲を持つ生身の小秋ではないと。これは酷い。非モテマインド役満といった感じだ。ただし漫画の主人公なのでモテる。こんな不条理があって良いのか。

まあ、古来男性の理想とされているハーレム系主人公に難癖をつけるのは野暮の極みと言えばそこまでなのだけれど、どうにも引っ掛かるものは仕方がない。

ただ、私にとって望ましい展開もある。

『溺れる花火』に続く峰浪さんの第二作『ヒメゴト』では、主人公由樹の幼馴染祥が非モテマインドの男性キャラで、由樹に勝手な幻想を投影して散々に迷惑をかけるのだけれど、その非モテ行動はちゃんと気持ち悪がられて罵倒される。

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同じ作者が同じ小学館モバMAN」に連載した作品で、非モテマインドの男性キャラが主人公からサブの悪役(最終巻で由樹と和解するけれど)にまで格下げされているというわけだ。祥は最終巻で脱非モテマインドすることによって、初めて由樹とフラットに会話できるようになる。ストーリーのメインを彩る心理描写から、脱すべき悪へと変化した非モテマインド。「脱非モテ」の時代が訪れているのかも知れない。