『ヒメゴト』 ―恋の幻想と自己受容―

『ヒメゴト』を読んだ。かなり濃い性描写を含む恋愛漫画なのだけれど、ストーリーが面白すぎてオナニーする暇もなく最終巻まで読んでしまった。

登場人物

同じ大学に通う19歳の主要キャラ3人は皆、「表の顔」と「裏の顔」を持っている。

櫟原由樹(ユキ/ヨシキ)

  • :Tシャツにジーンズ、ショートカットで男言葉を喋り、サバサバした性格。「ヨシキ」と呼ばれる。
  • :高校時代の女子制服を着て部屋でオナニーしている。

永尾未果子

  • :世間知らずで天然なお嬢様。
  • :名門女子高の黒い制服を着て15歳を騙り売春している。

相葉佳人(カイト)

  • :イケメン。金目当てに歳上の女性と交際している。
  • :未果子が大学に着て来るものと同じ服を買い、女装している。

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登場時の3人は表でも裏でも「仮装」していて、それぞれが強い性嫌悪を抱えている。

幻想の片想い

序盤では、由樹→カイト→未果子→由樹という一方通行の綺麗な三角関係が成立していて、それぞれが片想い相手に一方的な幻想を押しつける。

『ヒメゴト』は恋愛における幻想の描き方が卓越している。それぞれに表と裏の顔がある中で、部分的に秘密を共有したり嘘をついたりする駆け引きがあり、相手について知っていることと知らないことの狭間で様々な誤解や理想化が発生して、絶えず状況が変化するので、続きが気になって目が離せない。

恋は幻想。恋愛のドキドキ感をたっぷりと堪能してしまった。

関係の多様性

『ヒメゴト』では、「カイト×由樹(ユキ)」、「由樹(ヨシキ)×未果子」、「未果子×カイト」という3パターンのすべての関係性について、恋愛/友情の両面が丁寧に描かれるので、ボリューム感が半端ない。しかも3人とも、ゾクゾクするような攻めもかわいい受けも両方こなす完全リバ。これはすごい。

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他者と自己の受容

最初はお互いに幻想を押しつけて、性嫌悪も痛々しい3人だったけれど、徐々に理解を深め、それぞれの関係性の中で他者と自己を受容してゆく。最終巻の怒涛の展開の後、大満足の閉幕が訪れる。しばらくはこの心地良い読後感に浸っていたい。

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