『ポケモンユナイト』でマスターになるコツ

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7月に配信された『ポケモンユナイト』に最近ハマっていて、ソロを中心に600戦以上プレイして最上位のマスターランクでレート1300以上、世界ランク3000位以内になるまでやり込んだ。

ポケモンユナイトの魅力

私はこれまでスプラトゥーンでエイムができず、スマブラで小ジャンプが安定しなかったりして初心者帯で負けまくって挫折するくらいアクシャン操作が下手なのだけれど、ポケモンユナイトはボタン操作が簡単な上に、攻略情報の理解度や状況判断の方がよりクリティカルなので、アクション操作が下手でも結果を出すことができた。この手の大規模な対人対戦ゲームで上位層でプレイできた経験がないのでなかなかの達成感がある。

私はポケモンユナイトの派生元の『League of Legends』も数年前に遊んでいてかなり楽しめたけれど、

  • 1ゲームの時間が長い
  • チャットで英語で罵倒される

これらの要素がしんどいなと思って挫折してしまった。ポケモンユナイトはゲーム時間が短く、任意のテキストを打てるチャット機能も存在しないので、気軽に遊べる印象だ。

マスターになるまでにやったこと

このゲーム、「アクティブポイント」というランクが上がる方向に補正がかかる仕組みがあるのと、ランクマッチで一定数連敗すると「Bot戦」と呼ばれるCPU相手の試合が挟まりほぼ確実に勝たせて貰えるという謎の仕様があるので、最上位のマスターランクになるのはそこまで難しくない。

ただ、私は元々アクション操作が不得手なこともあって、ハイパーランクからエリートランクにかけて全然勝てなくなって相当苦しんだ中、下記のポイントを意識して試合数をこなしたらどんどん上手くなってマスターになることができた。

YouTubeで攻略情報を研究する

ポケモンユナイトは比較的高頻度にアップデートがあり、ゲームバランスが大きく変化するので、最新の攻略情報にキャッチアップするにはYouTubeを観るのがお手軽だ。

私はこの方たちの動画を観ている。

複数ポケモンを使えるようにする

このゲームのポケモンにはそれぞれレーンアタッカーやジャングラー、ディフェンス、サポートなどの得意な役割があり、この役割のバランスが良くなるようにチームを組むのが勝率を上げるために非常に重要になって来る。例えば記事執筆時点での環境で言うと

このようなチーム構成が非常に強く、ソロでこれに近い構成で組めた時点で勝率がかなり高くなる。現環境のソロで言うと

この辺りの傾向があるかと思う。

ソロだとランダムに集まった味方が各々好きなポケモンを選んでチーム構成が崩壊することが多いので、自分が2〜3キャラ使えるようにして状況に応じて選ぶポケモンを変えるのが勝率を上げる近道だろう。キャラ選択画面ではまず一番自信のあるポケモンにカーソルを合わせて、チーム構成が悪そうだったら別役割のサブのポケモンに切り替えると良いだろう。私の体感だと、一定以上の試合数をこなして勝率を55%以上出せるポケモンについてはかなり得意と言って良い気がする。

自分の行動の良かった点、悪かった点を意識して振り返る

ゲームの理解度が上がってくると、自分の今の行動は勝ちに貢献したなとか、逆に負けを引き寄せたなということが分かるようになって来る。チーム全体への貢献を意識しつつ、自分の行動を客観的に振り返って次戦以降の立ち回りの改善につなげると上達が早くなる。

通信環境を見直す

私は当初普通にWiFiでプレイしていて通信が安定せず、操作不能になる時間帯があったりしてつらかったけれど、有線LANアダプターを購入して有線接続するようにして、フレームレートの設定を「高」に変えたら快適にプレイできるようになった。

フレンドマッチやってくれる方、募集してます!

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このゲーム、一人でやるより友達とチームを組んで遊んだ方がやっぱり楽しい。Twitterのフォロワーなどでユナイトをやっている方がかなり少ない印象があるけれど、もし音声通話しながら私とユナイトやっても良いよっていう方がいたらぜひお声がけいただきたい。

私の使用キャラは自信がある順番にワタシラガ、ウッウ、アローラキュウコンゲッコウガなので、どのポジションでも入れると思う。特に勝ち負けにはこだわっていないので、上手くても上手くなくても大丈夫で、ランクマッチとスタンダードバトルもどちらでも歓迎だ。

コーディング不要で決済を導入できるStripe Payment Linksを使って個人サービスに寄付機能を追加してみた

赤字を垂れ流し続けるUtakata

3年間運用している個人サービスの短歌投稿サイトUtakataの運用費が毎月約2000円(Heroku毎月16$*1 + お名前.comドメイン維持費毎年約3000円)発生しているのだけれど、収益化の目処がまったく立っていない。

一時期試験導入していたnendのバナー広告はほとんどクリックされず最低引き落とし可能額の3000円に到達できなかった。

Stripe Payment Linksのリリースを知る

そんな中、コーディング不要で決済機能を導入できるStripe Payment Linksが最近リリースされていたことを知り、これを使って寄付機能を追加してみることにした。

Stripeアカウント登録

必要情報と本人確認書類を写真でアップして簡単にアカウント登録が完了した。

Payment Links作成

こちらのドキュメントに記載の方法で簡単に支払い用リンクを作ることができた。

ブランディング設定

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ブランディング設定でアイコンや色の調整も可能で、サービスのサイトから遷移しても違和感の少ないリンクを作ることができた。

Utakataへの寄付のお願い

こちらのページに寄付のお願いの詳細を記載したので、ぜひご支援いただきたい。

*1:Hobby Dyno 7$ + PostgreSQL Hobby Basic 9$

『ENDER LILIES』 ―骨のある難易度だがアクション操作が苦手でも楽しめるシンプルなアクションRPG―

最近Switchで発売されたアクションRPGメトロイドヴァニア)の『ENDER LILIES』をCエンドまでクリアして非常に楽しめたのでレビューを書きたい。

グラフィックと音楽の没入感がすごい

『ENDER LILIES』はTrailerのグラフィックが魅力的でやってみたくなったのだけれど、実際にプレイしてみてもグラフィックが美麗で敵キャラ含めたキャラデザも秀逸で世界観に浸れる作りだった。

また、Miliが制作しているゲーム内音楽も非常に完成度が高く、作品の世界観にもマッチしている。特にボス戦ではピアノを基調とした臨場感のある音楽が流れて来て手に汗握る戦いの緊張感を高めてくれる。

骨のある難易度だがアクションゲーム初心者にも優しい工夫がある

私は普段はSLGをメインにプレイしていてアクションゲームはあまりやらず、特に反射神経を活かした操作が苦手で、スマブラスプラトゥーンで全然上手くならずに挫折したりとかアクションゲーム全般に苦手意識もあるくらいだ。そんな私でも『ENDER LILIES』は下記のような工夫もあって問題なく楽しむことができ、かつヌルゲーという訳ではなく困難な戦闘を試行錯誤して攻略する達成感も味わえた。

シンプルで快適な操作性

2段ジャンプと無敵付与で回避できるダッシュ、ジャストディフェンス(パリィ)の基本操作に加えて1ボタンで発動する各攻撃スキルがあるシンプルな操作性で、キャンセルや先行入力などもゆるく設計されているので、ボタンを押すタイミングとか複雑なコマンド操作でキャラクターが思うように動かないということがなく、やりたいことと実際のキャラクターの動きを一致させるのが容易だった。

プレイスタイルに合わせて選べる多彩な攻撃スキル

ボスを倒すと増えて最終的に26種類にも及ぶ攻撃スキルを、3種類ずつ切替可能な2セット最大6種類セーブポイントで選択して進行するシステムになっている。この攻撃スキルが近接、対空、遠距離、突進、設置、ジャストディフェンスからの反撃やオート攻撃の使い魔など多彩に揃っていて、各自のプレイスタイルやステージとの相性に合わせて選べるようになっている。また、主人公のリリィは攻撃せず、ジョジョのスタンドのように倒したボスが味方となって攻撃するモーションが格好良い。

他の人のプレイ動画を見ると、アクション操作が得意な人は近接やジャストディフェンス系のスキルを好む傾向がありそうだけれど、私は遠距離や使い魔系のスキルをメインに攻略していた。どのスキルも高性能なので、便利な使い途を発見する楽しみもある。

デスペナなしで安心して死に覚えできる

難易度は高めだけれど、死んでもデスペナなくセーブポイントに戻るだけなので安心してトライ&エラーできる。また、セーブポイントで休まなければマップで倒した敵が再度出現することはないので、敵を全部倒してから落ち着いてマップ探索をすることもできる作りになっている。

ボスの行動には一定の規則性があり高度な反射神経は要求されない

各ボスはド派手な攻撃モーションを持っていて、初見での難易度は非常に高く感じられるけれど、何度もトライしていると行動の法則性が見えて、安全に攻撃できるタイミングがつかめるようになっている。

通常の雑魚敵も非常に攻撃力が高い設計になっているので、各敵キャラの攻撃パターンをつかむのがこのゲームの醍醐味の一つだ。

シナリオが更に良ければ…

このように素晴らしいゲーム体験だったけれど、シナリオについては若干の不満点があった。Cエンドまでクリアして達成感と余韻のあるシナリオで、決して完成度は低くないのだけれど、キャラクターが皆「アンニュイな良い人」的なノリで、キャラクターごとの個性付けが十分でないように感じた。グラフィックや音楽に加えてシナリオの完成度が更に高ければより圧倒的な感動を味わえたのではと、贅沢な要求ではあるけれど感じてしまうところがあった。

参考になる攻略サイト

メトロイドヴァニアなのでマップ探索も主要な要素だけれど、この手のゲームに慣れていないとなかなか難しくサクサク進めない印象があったので、私は攻略サイトを積極的に見ながらプレイした。

この2つのサイトを参考にすればマップ要素をコンプリートできるだろう。

おすすめスキル

最後に私の個人的なおすすめスキルを書きたい。

黒衣の騎士

初期スキルながら強力な近接スキル。隙が少なく小回りが利き、2撃目以降上方向にも攻撃判定があり使い勝手が良い。こだわりがなければ近接はこれだけでまったく問題ない。

専用強化アイテムの「古き魂の残滓」の入手方法は上のページを見ればバッチリだ。

黒の魔女イレイェン

射程の長い飛び道具でホーミング効果もあり使用可能回数も多めと非常に使い勝手の良いスキル。敵の攻撃範囲外から一方的に攻撃できるシーンが非常に多い。私の場合このスキルで倒した敵の数が圧倒的に多いと思う。

花の魔女

上方向の判定が強く対空として使え、吹き飛ばしてスタンさせる効果もあり強力。ラスボスとの相性も良いので、最後まで強化しても活用できる。

西の商人

使い魔のカラスで、発動すればずっとリリィの近くを飛んで自動で遠距離攻撃してくれるので、回避操作に専念しながら攻撃できる。特にシビアな回避操作を要求されるボス戦では助かる。

城下の娘

使い魔の犬で、遠距離のカラスと対照的に近接で攻撃する。足場の下に敵がいる場合に、犬だけ降ろして一方的に攻撃する使い方もできる。また、スキルを2枠使ってしまうけれど、カラスと同時に発動しても強い。

「不適性検査スカウター」を採用に活用する企業への違和感

先日の記事では触れなかったけれど、転職活動中に受験した「不適性検査スカウター」という適性検査に強い違和感があったので書いておきたい。

異様な「適性検査」

ある企業の最終面接前に「適性検査」を受けてくださいということで、受けてみたところ、ギョッとするような質問が多数出題されて驚いた。「検査SS」、「検査SB」という奇妙な用語が画面に表示されていたのでググってみたところ、「不適性検査スカウター」という製品であることが分かった。

障害者排除的な質問を多数出題する「不適性検査スカウター

YouTubeの宣伝動画を観るだけで、何とも言えない嫌な感じがするだろう。

実際に検査Sを受けた人によると「SPIに比べると質問内容が露骨」「虚偽回答に対して結構厳しい」「忘れた頃に似た質問が何度も出てくる」「能力検査についてはSPIに精通していればほぼ問題ない」といった体験談が出ています。要するに、露骨かつ厳格にストレス耐性や抑うつ傾向や注意力などをチェックしている訳です。

発達障害の診断でないのは製作会社が明言している通りなのですが「発達障害によくある事」や「ストレス耐性の弱さ」については露骨な質問で積極的に推理しようとしてきます。不適性検査が発達障害精神疾患を落とすテストと言われるのは、この辺りが原因となりそうです。

一方、検査Sにおいて「資質検査」を受けたというBさんは「発達障害精神疾患を排除する明確な目的がある」と断じています。印象に残った質問として「じんましん」「胃腸の調子」「破壊衝動」「独り言」を挙げており、その露骨さに驚いたそうです。

「不適性検査スカウター」をネットで検索すると、強い違和感を表明する記事が多数ヒットする。上の引用部分については私もまったく同じ印象を受けた。明らかに異様で、露骨に排除的な質問を多数出題してくるのだ。

このような製品を利用する企業に入社することは社会悪に貢献することにならないか

「不適性検査スカウター」を利用していた企業は、その他の点では印象が良く、第一志望群で検討していた。「不適性検査スカウター」を理由に選考辞退を切り出すわけにも行かず、結局最終面接を受けて、内定が出た3社のうちの1社になった。

この企業のオファー面談が最後の日程で、その他の2社の条件が出ている状態で、私はこの企業の提示条件が「悪くあって欲しい」という倒錯した願望を抱いていた。もしこの企業の条件が一番良かったとしたら、年収と社会正義のどちらを取るか選ばなければならない。幸い、この企業の提示条件は3社中2番目に高い条件で、スッキリと一番条件の良い企業に入社を決めることができた。この企業の条件が一番良かったとしたら私はどうしただろうか。「人事の一部の人間の権限で決まったのだろう」などと自分に言い訳して、この企業を選ぶことがなかったと言い切る自信はない。

また、最後のオファー面談時に、または転職エージェント経由で「不適性検査スカウター」についての悪印象のフィードバックを伝えることも考えたけれど、「こういうこと」を伝えてまともに通じそうな機会を見いだせず、言い出すことができなかった。

社会悪に直面した際の自らの不甲斐なさを痛感しつつ、ここに改めて抗議の意を表明したい。

ツイキャスの録音をAnchorにアップしてPodcastのラジオ配信をお手軽に始める

https://anchor.fm/tokyocoolboys

ライスさんがやっているTokyoCoolBoysのラジオがツイキャスの録音をAnchorというサービスにアップしているのを見て、私もツイキャスで好んで配信しているけれど、ツイキャスでは録音を整理できないことに課題感を持っていたので、Anchorを試してみることにした。

Anchorとは

2019年にSpotifyに買収されたPodcast配信サービスで、音声データをアップすると、Anchor本体以外にもSpotifyその他のPodcast配信サービスにRSSを通して同時配信できるサービスのようだ。

試してみたところ、音声ファイルをアップするだけでリッチなUIの配信サイトがサクッと作れてSpotifyでも聴けるようになるので便利な印象だ。

ツイキャスの録音データをアップする

ツイキャスの録音をMP4形式でダウンロードできるので、そのままアップしても、必要な編集を行ってからアップしても良い。

私の場合はMacQuickTime Playerで簡単に動画の結合ができたので、ツイキャスの時間制限の関連で録音ファイルが分かれてしまっていたのをくっつけてアップしてみた。

まとめ

アメリカではPodcastのリスナーが1億人以上いるらしくカルチャー/ビジネス両面で大変なムーブメントになっているらしい。

Podcast配信するとただの内輪の雑談ツールだったツイキャスも何だかイケイケな趣味になったような気分だ。

一連の「弱者男性論」言及から見えて来た「弱者男性」概念のコアとその将来への提言 ―フェミニズムとのコンフリクト―

クリッツァ―さんの「弱者男性論」に批判的に言及した記事を発端として、Twitterはてな匿名ダイアリー(通称「増田」)で「弱者男性」の議論が盛り上がっている。

クリッツァ―さんの記事では「キモくて金のないおっさん」や「かわいそうランキング」、「女性の上昇婚志向」というワードが言及されていることから、Twitterのアルファ弱者男性論客*1の議論を念頭に置いていると思われる。

その一方で、増田の弱者男性論エントリやそこについたブコメを読むと、いわゆる「あてがえ論」とは一緒にしないで欲しいとの見解も頻出しており、どうやらTwitterのアルファ論客による論調こそが「弱者男性論」であると結論づけたのではミスリードな部分があるようだ。

そのような問題意識の元、ただ対立を煽りたいだけの野次馬的言及を慎重に排しつつ、一連の増田とそこに付いたブコメを、当事者的言及と解釈できるものを重視して読み解いてみたところ、「弱者男性」という一見して定義不明瞭な印象を受ける用語について、コアと呼び得るようなコンセプトがあることが見えて来た。

「男性」というだけで「強者」扱いしないで欲しい

結論から言うと、フェミニズムは「男性」という属性についてまとめて「強者(マジョリティ)」として批判するけれど、男性が皆強者ではなく、弱者の男性もいると認めて欲しいというのがそのコアだと解釈した。

'弱者男性への救い'が何であるのか、具体的にどのような社会的状況が実現されれば、弱者男性は救われるのか、という点について意見を募りたい。

https://b.hatena.ne.jp/entry/4700814602038291234/comment/akuwaruaku

弱者男性への救いとは、具体的に何か

「男性は皆全員強者だ」論を見たときには、「こんな惨めな人生でも強者あつかいか……」とは思ったんで、せめて強者として扱うのはやめてほしい。どうせ救われぬ人生だけど、救われなかったことくらいは認めてほしい

2021/04/06 02:20

「弱者男性への救い」について素朴な疑問を呈した増田に対して、はてなスターが多い順*2に上から2つのブコメは同じ趣旨の内容に読める。

https://b.hatena.ne.jp/entry/4700835551288076226/comment/aobyoutann

『『「弱者男性は従来の社会運動で既に包摂されている」みたいな方向性に持っていきたいのかな - frothmouth のブックマーク / はてなブックマーク』へのコメント』へのコメント

基本的に男性一般を強者として殴らなければ"弱者"男性なんてわざわざ言う必要ないはずなんですよ。なぜなら頭のおかしい人以外は社会的弱者に男性は含まれないなどという差別的な思考はしないから

2021/04/07 22:34

また、別の増田についたブコメでよりダイレクトにそのコンセプトを述べているものもあった。「"弱者"男性」というのは男性というだけで強者と決めつけて批判するフェミニズムへのカウンターだと言うのだ。これはルーツに関するソース付きの議論ではないけれど「弱者」 + 「男性」という語構成はそういうことだと理解すると腑に落ちる。より広義に言うと、社会的マイノリティに寄り添う言葉は多く持つ一方で、個別の事情に関わらずマジョリティとされる男性には寄り添う言葉を持たないようないわゆる「リベラル」についての不信感がそのコアにあると読み取ることができるのだ。このように理解すれば、「弱者男性」という用語が非常に高い確率で「フェミ」や「リベラル」への批判とセットで用いられることへの納得感も出る。

ただ、漫画やアニメやゲーム等の二次元コンテンツに触れながら余生を生きていければ、それで良いなと言うのが正直な気持ちです。

しかし残念ながらそうした二次元コンテンツは昨今幾度も炎上を経験しており、時には好きな作品がその対象に成る事も有ります。

フェミニズムと「弱者男性」のコンフリクトの具体例としては、Twitterで度々炎上する二次元コンテンツへのフェミニズムからの批判が挙げられるだろう。

客観的な要件と思われるもの

上述の観点がコアコンセプトと思われるため、上の増田のように「結局「弱者男性」って誰なんだよ」と「弱者男性」の客観的定義を求めたくなるのは、実は「弱者男性」の本質ではないとも言える。その一方で、私がこれまで観測して来た議論に基づいて客観的要件と思われるものを挙げると

  • 経済的弱者であること
  • (経済的弱者であることと関連して)家庭を持てないこと
  • そのような状態を一定以上不幸に感じていること

これらの観点が重要と思われるけれど、個人差が大きくあり、「弱者男性」の具体的状態については上の範疇に留まらないと理解すべきだろう。家庭を持つことについては諦めている議論と諦めていない議論(その極端なものが「あてがえ論」)が両方とも弱者男性論として観測される点に注意が必要だ。

男性学は「弱者男性論」的関心をどう扱って来たか

フェミニズムとのコンフリクト

冒頭のクリッツァ―さんの記事では男性学が脱規範的議論に終始して*3弱者男性を具体的に救う議論をしていないことと、今後して行く必要があることが述べられているけれど、弱者男性論の本質が個別の弱者的状況よりもフェミニズムとのコンフリクトにあるとしたら、これは男性学が日本での発足当初から主要な問題意識として考えて来たテーマと言える(しかし、後からも述べるように、その前提が弱者男性論とは大きく異る)。

上野千鶴子さんが男性学について「フェミニズム以後の男性の自己省察であり、したがってフェミニズムの当の産物である」とした上で、「男性学とは、その女性学の視点を通過したあとに、女性の目に映る男性の自画像をつうじての、男性自身の自己省察の記録である」と定義しているように*4男性学はその発足からして「男性はフェミニズムとどう向き合うべきか」という問題意識を主要なテーマの一つとして来た。

女性の性被害やDV被害を告発する#MeToo運動が二〇一七年に起きたが、被害を訴える女性に対し、被害を矮小化・無化する二次加害、女性の運動家や政治家に対する中傷・脅迫的なメッセージを送りつけるジェンダートローリング(gender trolling)など、バックラッシュの再燃とも言える現状がある。それは何事もなく暮らしてきた、もしくはジェンダーとはまた別の理由で不遇な状況を生きてきた男性たちが、突如「加害者」「抑圧者」として引きずり出され、その際に生じた抵抗感や不安、恐怖といったネガティブな感情に対処しきれず、過剰な防衛として加害に転じてしまう動態を示しているのかもしれない。女性から申し立てられた際の男性の脆さが、そこには現出している。

尾崎俊也・西井開「とまどいを抱える」

最近の動向で言うと、メンズリブ団体の「ぼくらの非モテ研究会」を主催する西井さんとその友人の尾崎さんが「とまどい」という用語でフェミニズムの訴えに触れたときに男性に生じるコンフリクトに注目している。「何事もなく暮らしてきた、もしくはジェンダーとはまた別の理由で不遇な状況を生きてきた男性たちが、突如「加害者」「抑圧者」として引きずり出され」はかなり弱者男性論の文脈に近い言及と読めるだろう。ただし、上の引用部分を見ても分かるように、フェミニズム支持の価値観の元、弱者男性論的現象に対して批判的な視点で書かれているため、弱者男性論と注目するテーマに一致は見られても、前提とする価値観に決定的な対立があると言える。この価値観の対立は上の議論に限らず、男性学の議論全般にあてはまるものだ。

男性の強者性は一枚岩ではない

弱者男性論は男性すべてが「強者」ではないと訴えるけれど、男性学においても男性が一枚岩の強者でないことは、主にコンネル(Raewyn Connell)の「ヘゲモニックな(覇権的)男性性」という概念の応用として論じられて来た。

コンネルは「どんなときでもある一つの形式の男性性が他の男性性よりも文化的に優位にある」として、これをアントニオ・グラムシの議論に依拠して「ヘゲモニックな男性性」と名付ける。一方、「従属的な男性性」は「男性集団のなかでの支配―従属の特定のジェンダー関係」において最下層に位置づけられているものを指す。次に「共犯的な男性性」は「家父長制の最前線部隊になることなくその利益配当を受けるような形で構築される男性性」、つまりヘゲモニックな男性性を体現せずに家父長制の利益配当を受けるような男性性のあり方を指す。コンネルによれば、「(男性性の)ヘゲモニックなパターンを厳密に実践している男性の数は極めて少ない」にもかかわらず、多くの男性が「全体的な女性の従属から生まれる男性一般の特権」を受けている。そして、コンネルは「エスニック・マイノリティのような搾取あるいは抑圧された集団のなかで生み出される男性性」を「周縁化された男性性」と呼ぶ。この周縁化された男性性は「ヘゲモニックな男性性と多くの特徴を共有しているが、社会的に脱―権威化されている」点が異なる。

ただし、このコンネルの議論で言うと「弱者男性」は「周縁化された男性性」よりも「共犯的な男性性」に近く、「ヘゲモニックな男性性」とともに女性を従属させ男性特権を享受する層ということになると思うので、この理論に基づいて「弱者男性」に寄り添うような議論を展開することは難しい。

以上見て来たように、男性学は弱者男性論の関心と共通する対象を論じて来たけれど、その前提とするフェミニズム支持の価値観に弱者男性論との決定的な対立があるため、弱者男性論には活用しづらいと言えそうだ。

弱者男性論の今後への提言

以上は弱者男性論を取り巻く状況の整理で、ここからは私の見解を書きたい。政治・経済の観点による問題解決は重要と思われるけれど、私は詳しくないのでこの記事では触れない。

Twitterアルファ論客主導の弱者男性論からの脱却

クリッツァ―さんの記事内での「弱者男性論」のように、ただ「弱者男性論」と言ったときに現状で最も想起される可能性が高いのはTwitterのアルファ論客が語っているところの弱者男性論だろう。しかし、実際には弱者男性論への関心はそこに留まらないことが今回の一連の増田やブコメによって示唆された。

ブコメで自分の心情を整理して吐露したり、極端な意見には「弱者男性の代表みたいな態度してそんなことは書かないでくれ」と異議申し立てをしたりと、色々と頑張って建設的な話に持ってこうと頑張っているのだが、すぐに疲れてしまう。

でも、黙ってしまっては、人と人との対立を煽るだけの極端な言論だけが残ってしまうだろう。

それだけはどうにも嫌で……もう少し書こうかなと……もう少しだけ頑張ろうかなと、そう思う。

この増田のように「そうでないもの」を語ろうとする試みを私は支持したい。
https://b.hatena.ne.jp/entry/4700910536080896130/comment/ueno_neco
そもそもの問題として、「弱者男性」や「キモくて金のないおっさん(KKO)」という用語にはあまりにも女性への人権侵害的な言説のイメージが強いので、ueno_necoさんの言うように「弱者男性とかKKOという言葉や概念は解体」し、この用語を敢えて使わずに自身の関心を正確に語る試みがなされても良いと思う。

また、はてなブックマークブコメはてブユーザー以外からは参照しづらく、短文では論点が不明瞭なので、往年のはてな非モテ論壇の盛り上がりの再来は望めないとしても、もう少しブログ等でまとまった文章で論じる人が増えても良い気がする。

コミュニティの可能性

弱者男性同士の遊びのコミュニティに参加しているという話が肯定的に受け止められているのは希望がある。

メンズリブという選択肢

コミュニティの選択肢としてメンズリブもある。

私が主催しているメンズリブ団体「うちゅうリブ」の活動内容は上の記事にまとめてあるけれど、活動を行う中で、フェミニズムの男性批判に対するとまどいが話題になることも多い印象だ。ただし、メンズリブフェミニズムベースの活動という趣旨が強いため、決してフェミニズム的価値観を押し付けるようなことはしないけれど、フェミニズムがどうしようもなく嫌いという方には合わない場になってしまっているかとは思う。

まとめ

弱者男性論は非常に現代的な関心で、既存の男性学メンズリブでは、主にフェミニズムに対する価値観の相違を原因としてその問題意識に十分に応えることができない可能性がある。弱者男性論にはTwitterの議論でイメージされるような極端な反動的アンチフェミ言説に留まらない関心が含まれていることが示唆されるため、今後の展開を注視したい。

2021/05/25追記

この記事を投稿後も弱者男性論言説の観測を継続している。

この記事の段階では気づいていなかった問題意識を踏まえて、上のポッドキャスト*5で整理して話してみた。こちらの内容も記事化するのが望ましいけれど、複雑な論点を含む話題のため、ただちに文章化するのは難しそうだ。

簡単に要点だけ書くと、この記事では「フェミニズムとのコンフリクト」が弱者男性論のコアだとしたけれど、現在では「男性の苦境についても「リベラル」がマイノリティを扱うのと同様に配慮して語って欲しい」がそのコアだと認識している。ただし前者の観点が存在しないという訳でもなく、問題意識に個人差が大きいため、弱者男性論を統一的に理解するのはそもそも難しいのかも知れない。

*1:白饅頭すもも小山晃弘島本など。

*2:2021/4/8現在。

*3:性愛文脈での脱規範的議論は論文レベルの「男性学」ではなく、田中さんの『男がつらいよ』のようなカジュアルなテキストに見られるものである点には注意したい。

*4:上野千鶴子「「オヤジ」になりたくないキミのためのメンズ・リブのすすめ」(『日本のフェミニズム 別冊 男性学』所収)

*5:ツイキャスの録音をアップしたもの。

コミュニケーションへの苦手意識の克服とその先

3月末を最終出勤日として有休消化に入るため、全社集会で退職の挨拶を済ませて来た。約2年半勤めて、惜しまれるような雰囲気で、送別会もやって貰えるらしい。要するに普通の退職プロセスなのだけれど、私の人生を振り返ってみると「まともなプロセスで友好的にコミュニティを離れる」ことができたのが今回が初めてだと気づいた。

高校の部活も、最初に入った大学も、次の大学のサークルも、最初に就職した職場も、逃げるように途中で辞めて来た。毎回コミュニティの人間関係が徐々に悪化し、いづらくなるパターンだった。今までのコミュニティで人間関係が上手く築けなかったのはコミュニケーションに関するマインドセットに問題があったからだと今では認識している。何がまずかったか。

「浅い」コニュニケーションを軽視するのをやめる

これが一番まずかったのだけれど、昔の私は「浅い」人付き合いと「深い」人付き合いを区別し過ぎていた。つまり、お互いの価値観に高度な一致が見られ、趣味、学問、芸術などについて深い話ができる人間関係に価値があり、そうでないものに価値がないと考えていて、あまつさえ、浅い人付き合いを馬鹿にするような発言を積極的にしていた。これは今になっては完全に間違いだったと言える。

コミュニティでの人間関係は挨拶に始まって、雑談やコミュニティ運営に必要な(職場であれば業務上の)やり取りをただ積み重ねることにまず価値がある。話が盛り上がるに越したことはないけれど、価値観の高度な一致など必要なく、「そこにやり取りが交わされていること」自体に大きな価値がある。そういったやり取りを積み重ねる先に「信頼」が蓄積され、信頼のある人間はコミュニティで尊重される。

また「価値観の高度な一致」という幼稚な幻想を捨ててみると、人間はそれぞれに面白い。たとえ親密な関係にならなかったとしても人との会話それ自体が楽しく、一期一会的な味があると気づく。

コミュニケーションを恐れない ―普通の人はそんなにコミュニケーションが得意ではないと知る―

昔の私は、自分は世の中の普通の人と比べてコミュニケーション能力に劣っていると感じていて、例えば世間話などで上手く話題を選べないことなどを恐れて、挙動不審に陥っているような節があった。

今、特にコミュニケーションに苦手意識を持たない立場になってみると、実際あらゆる意味でコミュニケーションが得意で、そこを強みにしているような人はそんなにいないし、何らかの不安だったり苦手なコミュニケーションパターンを抱えている人がほとんどのように見える。

そういう適切な視座に立つと、上の世間話での話題が上手く選べなくて挙動不審になるとかの話も、そもそもコミュニケーションが得意な人が相手ならば自分が上手く喋らなくても話は弾むはずで、そうでないなら相手も自分と同程度以上にコミュニケーションが苦手ということなので、最善の努力をした上で話が盛り上がらないならそれは必ずしも自分が原因ではないと落ち着いて考えられるようになる。

なので、コミュニケーションが特に得意ではなくても、劣等意識を感じる必要はない。恐れのないテンションで臨むと、逆に他者の不安な気持ちが「見える」ようになって、場合によっては適切なサポートを入れることもできるかも知れない。

無難なコミュニケーションのその先へ

主に上の2つの観点のマインドセットの変更によって、今はコミュニケーションへの苦手意識がなくなった。これは大変な進歩なのだけれど、その一方で、無難なコミュニケーションの「型」に終始し過ぎているというのが最近の課題だ。

自分の中の尖っている部分を出したり、人と揉めたりすることへの忌避意識を少しずつ外していって、もう少し自然体で人と話せるようになりたい。今の私は人とのコニュニケーションを恐れてはいないけれど、過去の自分のように人間関係で失敗したくない、人から信頼される「まともなコミュニケーション」をしなくては、という点には強い恐れを抱いている。その恐れを解くことができればより本来的な自己をもってコミュニケーションに臨むことができるようになるはずだ。