『ブリガンダイン ルーナジア戦記』 ―SRPG戦闘に特化した超シンプルで硬派な国盗りSLG―

ブリガンダイン ルーナジア戦記  - Switch

ブリガンダイン ルーナジア戦記 - Switch

  • 発売日: 2020/06/25
  • メディア: Video Game

6月25日にSwitchで発売された『ブリガンダイン ルーナジア戦記』を1周クリアしたのでレビューを書きたい。

ターン制国盗りSLGとしてあり得ないほどシンプルなゲームシステム

このゲームは大陸内政マップとSRPG戦闘マップの2つの局面があるターン制国盗りSLGで、「ルーンの騎士」と呼ばれる武将が召喚したモンスターを部隊に組み込んで共に戦う点に特色がある。

まず驚いたのは、内政システムが極めてシンプルな点だ。領土の開発も外交もなく、部隊の訓練と武器やアイテムを探す探索があるだけだ。武器の重要性は低いので、実質的に訓練しか内政要素がないと言っても良い。更に言えば訓練するよりも侵攻してレベル上げした方が圧倒的に効率が良いので、このゲームは実質的に

  1. 部隊編成
  2. マップでの戦線管理(部隊の移動)
  3. SRPG戦闘

しか要素がないと言っても過言ではない。「諜報」のような要素もなく、各拠点の敵勢力の情報もすべて開示されている。

モンスターの種類やルーンの騎士のクラスの種類もかなり少なく、戦場1つにつき出せる部隊は双方3部隊までと、今どきのゲームにしては珍しくゲームシステムが徹底的にシンプルに作り込まれている。

そしてこの戦線管理とSRPG戦闘がなかなか楽しい。各国の初期状態やルーンの騎士撃退時に敵モンスターを高頻度で鹵獲できるシステムによって、部隊編成のランダム性が強く、また戦場ごとの平原、水辺や山地といった地形について各ユニットごとに有利不利の判定があり、各戦闘マップが地域の個性を反映する形で美麗に作り込まれているので、シンプルながら多様な戦闘を楽しめる。戦闘BGM、キャラボイスも良く出来ていて没入感がある。

戦闘バランスは移動後に魔法を打てない、MPは回復せず少なめ、一撃必殺するほどのダメージは基本出ない等デフレ系の調整になっている。デフレ系SRPGの定番として密集陣形で待ち伏せる戦法が圧倒的に強いのだけれど、ハードだと敵も密集してかなり賢く動いて来るのでなかなかジリジリした戦闘が楽しめる。各モンスターそれぞれに育てば強みがある調整になっているのも素晴らしい。

難易度は低め、主体的に縛りプレイを模索すべきか

このゲームはどうやら最高難易度のハードでもCPUチート的なものがないらしい。60ターンの縛りも私は14ターンでクリアできたので特に短いということもなく、戦闘では1ターン毎にセーブが可能な親切設計なので、ゲームの難易度はこの手のゲームに慣れた人にとっては低めと言える。

しかし戦闘AIは賢く、それ以外のチートはないフェアな難易度が公式で用意されているということは、あとはプレイヤーが主体的に縛りプレイを模索するべきではないだろうか。セーブ縛りや多方面に侵攻する早解きクリア、オート戦闘縛り、初期レベルの高いルーンの騎士を敢えて使わない等、縛り条件はいくらでも思いつく。オールドスタイルで硬派なゲーム故、プレイヤーも「与えられたもの」に満足するのではなく自らの想像力をフルに発揮して様々なロールプレイを楽しむべきだろう。

残念な点

総じてシンプルなゲームが大好きな私にとっては非常に楽しめる作品だったのだけれど、やや残念な点もあったので最後に軽く書いておきたい。

ぬるいシナリオ

せっかくの硬派なゲーム性なのに、シナリオがお花畑感があり、ぬるい印象を受けた。世界観やキャラ絵を活かしてもっとシリアスなシナリオにしても良かったのではないだろうか。5chスレを見ても、シナリオは総じて低評価だ。シナリオが面白くないと全勢力をクリアするモチベーションを維持するのがなかなか難しい。

敵主力を撃破した後の消化試合感

上述したように最高難易度でもCPUチートがなく、敗北時に敵モンスターの鹵獲も可能で、新規には1レベルのモンスターしか召喚できないので、1度のプレイヤーの勝利で敵戦力は壊滅的な打撃を受け脅威でなくなる。この点にやや難易度的な歯応えのなさを感じたけれど、上述したように縛りプレイでカバーできる範囲ではある。

勢力ごとの個性付けの薄さ

モンスターの種類がかなり少なく勢力ごとの固有モンスターもいない。またルーンの騎士のクラスも大部分共通なため、勢力ごとの個性付けがかなり薄い。勢力固有のモンスターやルーンの騎士の能力の個性付けがもっと強ければ全勢力をクリアするモチベーションがアップしたのではと感じた。