『ファイアーエムブレム エンゲージ』 ―ストーリーマップの魅力に原点回帰したSRPGファン待望の一作―

ファイアーエムブレム エンゲージ』をストーリークリアまで遊んで非常に楽しめたのでレビューを書きたい。

駄作の予感しかしない事前印象

事前印象だと、以下のような観点で駄作の予感が強く、「それでもFEシリーズである以上やるしかないか」という後ろ向きな気持ちで購入していた。

  • マルスなどが出てくるクロスオーバー作品
    • クロスオーバー作品はシナリオや世界観が破綻しがちな印象
  • 世界観・キャラクターが幼稚な印象で、特に魅力を感じられない
  • ゲーム部分も「いかにも普通のFE」という凡庸な印象

実際に遊んでみて、正直シナリオやキャラクターの稚拙さについては事前印象そのままな部分もあったけれど、SRPGのストーリーマップ攻略部分の完成度が圧倒的に高く、SRPGファンとして心の底から楽しめるゲーム体験だったため、その魅力について書きたい。

「ストーリーマップだけのSRPG」として遊べるありがたさ

前作の『ファイアーエムブレム 風花雪月』は重厚なシナリオとキャラクターの関係性の掘り下げで高い評価を得た作品で、私も全勢力クリアして楽しめたけれど、拠点要素の拘束時間が大きすぎてストーリーマップ攻略に集中できないことに強いストレスを感じていた。

「拠点要素とランダムバトルがない、ストーリーマップだけのSRPGを遊びたい」それが切実な願いだった。とは言え、現代にそのようなオールドスタイルな作品が出るというのも期待し難い部分があった。

そんな中、本作はまさに「ストーリーマップだけで遊べるSRPG」だったのだ。

具体的に言うと、拠点(ソラネル)の各種ミニゲームやランダムバトル(遭遇戦)自体はあるけれど、システム上任意参加となっており、拠点に行かない、ランダムバトルをやらないゲームプレイが可能になっている。更に重要なことに、クラスチェンジや武器の売買など攻略上必須の要素が拠点外のシステムメニューからアクセス可能となっており、拠点とランダムバトルを縛った条件でも、高すぎない難易度で遊べるように設計されているのだ。つまり、開発者の意図として、拠点やランダムバトルをやりたくない人はやらなくて良いゲームとして作られている。私は難易度ハードクラシックの拠点、ランダムバトル縛りの条件でプレイして、ストーリーマップだけのSRPGはこんなにも楽しいのだと、懐かしくも現代では得難いゲーム体験を新たに得られたことに、本当にありがたい気持ちを感じながら遊んでいた。

シンプルで奥深い戦略性

本作では武器残数システムが廃止されていたり、クラスチェンジが基本と上級の2階層になっていたりと、従来のFEからあるシステムががかなりシンプルに調整されている。

その一方で、本作固有の「エンゲージ」システムによって、FEの過去作主人公の魂が宿った指輪と出撃キャラを任意に組み合わせることが可能で、最大12個手に入るこの指輪がすべて性能の尖った強力なスキルを得られる仕組みになっているため、どのキャラをどのクラスにしてどの指輪を持たせるかによって、キャラの活用性が無限に広がる奥深さがある。実際に「FEエンゲージ」でTwitter検索すると、多彩な攻略法がプレイヤーによって開拓されている様子が分かる。

シナリオは残念な点も多いが、ゲーム部分と連携した表現は見事

TwitterAmazonで本作の評価を読むと、「シナリオは残念だが戦闘は面白い」という評価の傾向がほぼ確立されているように見える。実際に遊んでみて、シナリオについては、いかにも茶番じみた稚拙な部分が多いと私も感じた。

その一方で、マップやエンゲージシステムのようなゲーム部分と連携したシナリオの見せ方には優れたものがあり、ゲーム上の手強い展開とともに手に汗を握るような局面がいくつもあった。

昔からのFEプレイヤーのゆるすぎさんのルナティック初見ノーリセットの実況プレイ動画を見ると、本作のゲーム展開と絡めたシナリオの見せ方がいかに上手いかということがよく分かる。

おわりに

シナリオについては賛否両論の本作だけれど、SRPGのストーリーマップ攻略が好きな人には確実に楽しめる作りになっているので、ぜひ遊んでみて欲しい。個人的には、これまでに遊んで来た色々なSRPG作品を振り返ってみても、本作は最高に近いSRPG体験を与えてくれたと感じている。今は難易度をルナティックにして2周目を遊んでいるところだ。